2010年04月14日

日本航空就業規則変更

過払い金を事例から学ぶ


(1) 被告の従業員構成(平成五年当時)
 被告における平成五年四月当時の従業員の構成はおおよそ次のとおりであった。
 総従業員数            約二万一五〇〇名
 管理職数(乗務員の管理職を含む) 約  四七〇〇名
 運航乗務員数           約  一五〇〇名
 客室乗務員数           約  六三〇〇名
 地上職員数            約  九〇〇〇名
(2) 労働組合の組織状況(平成五年当時)
 被告には、後記(第二、一、4、(三))の本件就業規程の変更が行われた平成
五年ころ、次のアからカの労働組合が存在
し、それぞれ以下のような組織状況であった。
ア 日本航空乗員組合
 日本航空乗員組合(以下「乗員組合」という。)は、昭和四八年一一月二二日に
設立され、被告の副操縦士、航空機関士、セカンドオフィサー及びこれらの要員
(訓練生)のうち、管理職以外の者で組織された労働組合であり、平成五年九月一
七日現在では、副操綻士、航空機関士、訓練生一四七九名の全員が加入していた
(甲第一六二号証、第三五四号証)。
イ 日本航空機長組合
 日本航空機長組合(以下「機長組合」という。)は、昭和六一年八月一日に設立
され、被告の運航乗務員で被告が管理職扱いをしている機長で組織された労働組合
であり、平成五年七月三一日現在では、被告の日本人機長一〇四五名のうち九六八
名が加入していた(甲第一六二号証、第三五四号証)。
ウ 日本航空先任航空機関士組合
 日本航空先任航空機関士組合(以下「先任組合」という。)は、昭和六二年二月
一〇日に設立され、被告の運航乗務員で被告が管理職扱いをしている先任航空機関
士で組織された労働組合であり、平成五年七月三一日現在では、一三二名が加入し
ていた(甲第一六二号証、第三五四号証)。
エ 日本航空客室乗務員組合
 日本航空客室乗務員組合(以下「客乗組合」という。)は、昭和四〇年一二月二
三日に設立され、被告の客室乗務員の一部で組織された労働組合であり、平成五年
一〇月の時点では、一六〇九名が加入していた(甲第三五四号証、乙第四五号
証)。
オ 全日本航空労働組合
 全日本航空労働組合(以下「全日航労組」という。)は、昭和四四年八月二五日
に設立され、被告の地上職員及び客室乗務員の一部で組織された労働組合であり、
平成五年一〇月の時点では、地上職員八三一六名及び客室乗務員四三七二名が加入
していた(甲第三五四号証、乙第四五号証)。
カ 日本航空労働組合
 日本航空労働組合は、昭和四一年八月に設立され、被告の地上職員で組織された
労働組合であり、平成五年一〇月の時点では、三二九名が加入していた(甲第三五
四号証、乙第四五号証)。
(3) 過去の組合構成についての経緯
 また、前記アの乗員組合の設立については次の経過があった。
 昭和二六年一一月一七日、被告の労働組合としては初めて日本航空労働組合が設
立されたが、昭和二九年九月二七日、同組合から日本航空乗員組合が独立し、別個
の組合が形成された。昭和四一年七月一〇日、同組合から運航乗
員組合が分裂したが、同組合は昭和四八年一一月二二日に乗員組合と合併し、現在
の乗員組合が設立された(甲第三五四号証)。
2 運航乗務員による業務遂行の法規制
(一) 労働基準法による労働時間の規制との関係
 労働基準法三二条は、労働者の一週間の労働時間を四〇時間と規定し(同条一
項)、一日の労働時間を八時間と規定している(同条二項)が、その例外として、
同法三二条の二はいわゆる一箇月単位の変形労働時間制を採ることができる旨を定
めている。
 被告は、副操縦士及び航空機関士の労働条件の基準を定める就業規則として運航
乗務員就業規程(以下「本件就業規程」という。)を制定している。原告ら運航乗
務員の労働時間は、一日当たり八時間を超える場合もあるが、被告は本件就業規程
五条一項において、「運航乗務員の勤務は、労働基準法三二条の二によるものとし、一ヶ月を平均し一週四〇時間一五分を超えない範囲で、特定の日において実労
働七時間を超えて、または特定の週において三七時間を超えて就業させることがあ
る。」と規定している。
(二) 航空法の規定
 航空法は、我が国が批准している国際民間航空条約に従って制定されたものであ
る。
 国際民間航空条約は、航空機の運航の方法について国際的に統一し、国際民間航
空の発達のため、各条約締結国が、航空規則の制定に当たっては、この条約及びこ
の条約に基づいて設定される規則にできる限り一致させることを約束する旨を定
め、さらに、航空に関する規則、手続等の統一により、航空を容易にするために、
国際民間航空機構(ICAO)が、国際標準並びに勧告方式及び手続を随時採択す
る旨を定めている(同条約一二条、三七条)。
 国際民間航空機構(ICAO)によって採択された付属書のうち、航空機の運航
につき直接規定した第六付属書(甲第四七九号証の一及び二)は「国際標準」及び
「勧告方式」とに別れる。「標準」は、その統一的適用が国際航空の安全又は正確
のため必要と認められる細則であり、締結国はこれを遵守し、遵守不可能の場合
は、理事会への通告が義務づけられているものであり、「勧告方式」は、その統一
適用が国際航空の安全、正確又は能率のために望ましいと認められる細則であり、
各締結国は、これを遵守するよう努力すべき義務を負うにとどまるものである。我
が国では、右付属書で定める国際標準の大部分が、航空法、同施行規則、告示等に
盛り込まれ
、あるいは法令の運用により具体化されている。
 航空法は、その旨及び同法の目的について、
第一条 この法律は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択さ
れた標準、方式及び手続に準拠して、航空機の航行の安全及び航空機の航行に起因
する障害の防止を図るための方法を定め、並びに航空機を運航して営む事業の秩序
を確立し、もつて航空の発達を図ることを目的とする。
と規定している。
 また、航空法六八条は、航空機乗組員の乗務について以下のように規定し、同法
一四五条一一号は、その違反者を一〇〇万円以下の罰金に処する旨規定している。
(乗務割の基準)
第六八条 航空運送事業を経営する者は、運輪省令で定める基準に従つて作成する
乗務割によるのでなければ、航空従事者をその使用する航空機に乗り組ませて航空
業務に従事させてはならない。
 同法施行規則は、同法六八条を受けて以下のように規定している。
(乗務割の基準)
第百五十七条の三 法第六十八条の運輸省令で定める基準は、次のとおりとする。
一 航空機乗組員の乗務時間(航空機に乗り組んでその運航に従事する時間をい
う。以下同じ。)が、次の事項を考慮して、少なくとも二十四時間、一暦月、三暦
月及び一暦年ごとに制限されていること。
イ 当該航空機の型式
ロ 操縦者については、同時に運航に従事する他の操縦者の数及び操縦者以外の航
空機乗組員の有無
ハ 当該航空機が就航する路線の状況及び当該路線の使用飛行場相互間の距離
ニ 飛行の方法
ホ 当該航空機に適切な仮眠設備が設けられているかどうかの別
二 航空機乗組員の疲労により当該航空機の航行の安全を害さないように乗務時間
及び乗務時間以外の労働時間が配分されていること。
 また、航空法一〇四条は、運航規程等の認可について次のとおり規定し、定期航
空運送事業者等が同条一項に規定する運航規程によらないで航空機を運航したとき
は、五〇万円以下の罰金に処する旨規定している(同法一五七条一号)。
(運航規程及び整備規程の認可)
第百四条 定期航空運送事業者は、運輸省令で定める航空機の運航及び整備に関す
る事項について運航規程及び整備規程を定め、運輸大臣の認可を受けなければなら
ない。これを変更しようとするときも同様である。



Posted by ミカリン at 16:50│Comments(0)
 
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