2010年05月24日

航空機事故損害賠償請求事件

過払い金にも利息は付く!


被告エアバスは,アジアの国々においても活発な販売活動を展開しており,日本国内に
営業所を有したことはないが,本件訴訟が提起された時点においては,被告エアバスの
本社従業員1名が東京連絡事務所に駐在し,秘書1名が東京で雇用されていた。東京
連絡事務所は,マーケット情報の収集及び宣伝に従事していたものの,航空機の売買
契約を締結する権限は付与されておらず,全ての売買契約はフランスにある本社によっ
て締結されていた。その後,この連絡事務所は廃止され,現在,日本には被告エアバス
の営業所も連絡事務所も存在しない。
なお,被告エアバスは,昭和54年から平成7年までの間,株式会社日本エアシステム
(以下「日本エアシステム」という。)に32機,全日本空輸株式会社(以下「全日空」とい
う。)に22機の航空機を販売している。
(2) 国際運送契約の締結等
ア 亡Cは,被告中華航空との間で,本件事故に先立ち,日本において,出発地及び到
達地をともに名古屋(日本国内)とし,予定寄航地を台北(台湾内)とする有償の国際旅
客運送契約を締結した(乙24の117)。
イ 国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約(昭和28年条約第17号。
なお,以下,同条約を改正する議定書〔昭和42年条約第11号。以下「ヘーグ議定書」と
いう。〕により改正されたものを「改正ワルソー条約」と,改正前のものを「改正前ワルソ
ー条約」といい,これらを併せて「ワルソー条約」という。)は,1条(1)項において,ワルソ
ー条約が航空機による有償の国際運送に適用される旨を定め,同条(2)項において,同
条約にいう「国際運送」とは,当事者間の約定により出発地及び到達地が二つの締約国
の領域にあるか,又は出発地及び到達地が同一の締約国の領域にあっても,予定寄航
地がその締約国以外の国の領域である運送をいうものと定めている。
そして,わが国は,改正ワルソー条約締約国である。
ウ ワルソー条約は,17条において,運送人は,旅客の死亡又は負傷その他の身体の
障害の場合における損害については,その損害の原因となった事故が航空機上で生
じ,又は乗降のための作業中に生じたものであるときは,責任を負う旨を定め,20条に
おいて,旅客についての損害については,運送人は,運送人及びその使用人が損害を
防止するために必要なすべての措置をとったこと又はそのような措置をとることが不可
能であったことを証明する場合には,責任を負わない旨を定めている。
また,改正ワルソー条約は,22条において,旅客運送においては,各旅客についての
運送人の責任は,25万フランの額を限度とする旨定めた(以下,同条を「責任制限規
定」ともいう。)上,25条において,22条に定める責任の限度は,損害が,損害を生じさ
せる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそれがあることを認識して行った運送
人又はその使用人の作為又は不作為から生じたことが証明されたときは適用されない
旨を定めている。
エ 被告中華航空の運送約款16条2項は,ワルソー条約が適用される国際運送ではな
い運送においては,損害を生じさせる意図をもって又は無謀にかつ損害の生ずるおそ
れがあることを認識して作為又は不作為がなされた場合を除き,被告中華航空の責任
は,乗客が死亡又は重傷を負った場合については,その損害の程度に応じて,最低75
万台湾ドルから最高150万台湾ドルに制限される旨を定めている(乙21)。
(3) 本件事故の発生等(甲1)
ア 事故の発生
本件事故機は,平成6年4月26日午後5時53分ころ(以下,同日中の出来事について
は時刻のみをもって表示する。),台北発名古屋行き中華航空140便として,乗客256
名及び乗員15名(運航乗務員2名,客室乗務員13名)を乗せて台北国際空港を離陸
し,愛知県西春日井郡豊山町所在の名古屋空港に向けて飛行し,午後8時12分19秒
(以下,同日午後8時台の出来事については分秒のみをもって表示する。)には名古屋
空港のアウター・マーカーを通過し,13分39秒に名古屋タワーから着陸許可を受けて,
名古屋空港滑走路34へILS(Instrument Landing System-計器着陸装置)進入を続け
ていたところ,15分4秒に気圧高度約500フィートから上昇に転じ,15分11秒ころから
急上昇を始め,15分31秒に気圧高度約1730フィートに達した後,急降下し,15分45
秒ころ,名古屋空港の着陸帯内に墜落し,機体が大破した結果,亡Cを含む乗客249
名及び乗員15名が死亡し,乗客7名が重傷を負った。
イ 本件事故機の飛行システムの概要(丙3ないし6)
(ア) 本件事故機の飛行
a 操縦輪
航空機は,操縦輪を操作して昇降舵(水平尾翼の後部の翼面)を動かすことにより,水平飛行を維持し,上昇し,降下するのであり,一定の速度の下では,操縦輪を引くことに
よって上昇し,操縦輪を押すことによって降下する。
また,航空機は,水平飛行中に速度が増加した場合には上昇するので,その場合に安
定した姿勢を保つためには,操縦輪を押さなければならない。
b 水平安定板
航空機の飛行経路又は速度を修正した場合,新しい飛行状態を維持するためには,絶
え間なく操縦輪に力を加える必要があるが,このような負担を除去するのがトリムであ
る。トリム操作は,ピッチ・トリム・コントロール・スイッチ(以下「トリムスイッチ」という。)又
はマニュアル・ピッチ・トリム・コントロール・ホイール(以下「トリムホイール」という。)によ
り,水平安定板(水平尾翼の前部の翼面)を操作することによって行われる。
水平安定板の機械的な動作範囲は,機首上げ方向14度,機首下げ方向3度までに制
限されており,水平安定板のコマンドは,機首上げ方向13度,機首下げ方向2度までに
制限されている。
操縦士が操縦輪に絶え間なく力を加えなければならない場合には,航空機はアウトオブ
トリムの状態である。これは機体の異常姿勢の原因となる望ましくない状態であって,即
刻イントリムの状態に正されなければならない。操縦士は,操縦輪に加えなければなら
ない力が無くなるまでトリムを操作し,これによって航空機はトリムされる。
c スラット及びフラップ
航空機は,速度の作用により主翼に発生する揚力によって飛行するが,速度が低下し
すぎると揚力が不十分となり,失速してコントロールを失い,墜落する。このため操縦士
は,速度を監視し,過度に減速しないようにしなければならない。
特に,離着陸時には,低い高度を低速で飛行することとなるため,主翼の前縁及び後縁
に設置されたスラット及びフラップが,連動して主翼を補助し,より高い揚力を発生させ
る。スラット及びフラップには,0/0,15/0,15/15,15/20,30/40の5段階が
設けられ,1段階ずつ揚力を上げていく。
(イ) 本件事故機のコックピットの概要
a 操縦席
操縦席は2席あり,左側の席に機長が,右側の席に副操縦士が座る。
各操縦席の前には操縦輪があり,操縦輪にはトリムスイッチ及びオートパイロット・イン
スティンクティブ・ディスコネクト・プッシュボタン・スイッチ(以下「オートパイロット解除ボタ
ン」という。)が備え付けられている。
b センタ・ペデスタル
二つの操縦席の中間に設けられたセンタ・ペデスタルには,エンジン・スロットル(スラス
ト・レバーともいい,エンジンの出力を手動で制御する。以下,「スロットル」又は「スラスト
レバー」という。)及びスラット/フラップ・コントロール・レバーが設置され,センタ・ペデス
タルの両側面にはトリムホイールが設置されている。
スロットルには,赤い押しボタンのオートスロットル・インスティンクティブ・ディスコネクト・
プッシュボタン・スイッチ(以下「オートスロットル解除ボタン」という。)が付いている。ま
た,スロットルの握りの下の位置には,ゴー・レバーが組み込まれている。
c メイン計器パネル
操縦席前面のメイン計器パネルは,中央パネル,機長用パネル,副操縦士用パネルに
分かれており,機長用パネルと副操縦士用パネルとは同じものである。
機長用パネル及び副操縦士用パネルには,それぞれ二つのディスプレイがあり,上の
方がプライマリ・フライト・ディスプレイである。
プライマリ・フライト・ディスプレイの上の部分は,フライト・モード表示器であり,左から右
に5区画(以下「第1区画」などという。)に区切られ,それぞれ自動飛行システムに関す
る情報を表示する。
d フライト・コントロール・ユニット(FCU-Flight Control Unit)
メイン計器パネルの上部に設置されているフライト・コントロール・ユニットには,オートパ
イロット・エンゲージ・レバー(以下「オートパイロット接続レバー」という。)のほか,自動
飛行システムの様々なフライト・モードを接続するためのスイッチが設けられている。
(ウ) 本件事故機の自動飛行システム
a 本件事故機の自動飛行システムは,離陸から着陸までの全ての飛行段階で最適の
飛行状況を実現し,操縦士を助けて,安全に飛行させることを目的として設計されてい
る。



Posted by ミカリン at 20:35│Comments(0)
 
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