2010年05月06日
不正競争 民事仮処分
過払い金はグレーゾーン金利のために発生した問題です
一 事実関係
1 債権者は、昭和四六年五月一日、ハンバーガー・レストランチェーンとして著
名な米国法人マクドナルド・コーポレーション(以下「米国マクドナルド社」とい
う。)が資本の五〇パーセントを出資し、残りの五〇パーセントを日本法人が出資
して設立された合弁会社であり、米国マクドナルド社とのライセンス契約に基づ
き、ハンバーガー類の販売を業としている。債権者及び米国マクドナルド社の略称
である「McDonald’s」又は「マクドナルド」は、債権者の営業を示す表
示として我が国において著名であり、また、債権者が商品の容器及び包装に使用す
る別紙目録四記載の標章(別紙目録三記載の標章「<26529-001>」の下
段に「McDonald’s」の文字を横一列に配した標章、以下「債権者商品ロ
ゴマーク」という。)も、債権者の商品及び営業を示す表示として我が国において
著名である(甲六、一二、審尋の全趣旨)。
2 債権者は、昭和四六年七月二〇日の第一号店の開店以来、その営業を示す表示
として、前記1の各表示のほか、別紙目録三記載の標章(以下「債権者ロゴマー
ク」という。)を使用している。
3 債務者は、パチンコホール及びマージャンクラブの経営等を業とする株式会社
であり、平成四年一二月ころから、本店所在地において、「ミナノ・パート2」の
名称でパチンコ店(以下「債務者店舗」という。)を経営している。債務者は、自
己の営業を示す表示として、債務者店舗の正面上部、ポル看板及び立看板、並び
に、右店舗のガラス戸上及び店内のパチンコ台の上部等に、別紙目録一記載の標章
(以下「債務者ロゴマーク」という。
)をその一部とする別紙目録二記載の標章(以下「債務者標章」という。)を使用
しているが、その際、債務者ロゴマークを他の文字の二倍以上大きく表示し、他の
文字及び数字を青色、緑色、黄色で表示するのに対し、債務者ロゴマークだけを赤
色に着色してこれを強調している(甲九の1~4)。
二 争点
1 被保全権利
債権者には、債務者に対し、不正競争防止法一条一項二号に基づき、債務者ロゴ
マークの使用を差し止める権利があるか。
(一) 債権者ロゴマークは、債権者の営業であることを示す表示として周知、著
名であるか。
(二) 債務者が債務者ロゴマークを使用することにより、債権者の営業と債務者
の営業の間に誤認混同が生じるおそれがあるか。
2 保全の必要性
第三 当裁判所の判断
一 争点1(一)(債権者ロゴマークの周知性)について
1(一) 債権者は、昭和四六年七月二〇日に第一号店を開店して以来、日本全国
にマクドナルド・ハンバーガー店を展開しており、初出店から二二年目に当たる平
成五年七月二〇日には一〇〇〇店目の店舗を開設し、同年八月二四日現在、全国に
一〇〇九店舗を有している。債権者の年間売上高は、昭和五七年に我が国外食産業
界で第一位(七〇三億円)となって以来、現在までその地位を保持しており、平成
四年度には二一二〇億円に達している(甲五、六、一二)。
(二) 債権者は、世界共通の営業方法(マクドナルド・システム)に従い、店舗
の外観、看板、従業員の制服、商品の包装等を統一しており、店舗表示として、各
店舗の正面に、赤地に黄色の債権者ロゴマークと「マクドナルドハンバーガー」又は「McDonald’s」の白文字を記載した大看板を掲示することが多いが、
赤地の看板を用いないで黄色の債権者ロゴマークを単独で正面部の外壁に表示した
り、「<26529-001>」の隣に「マクドナルド」「McDonald’
s」と白色又は赤色で小さく表示している。また、債権者は、店舗入口の前に、黄
色の債権者ロゴマークと「マクドナルドハンバーガー」の白文字を記載した赤地の
可動式看板を置いたり、外壁、入口や窓のテント、駐車場、屋上等に黄色の債権者
ロゴマークを大きく掲げたり、隣接の小遊園地の外柵、遊具等に黄色の債権者ロゴ
マークを表示したりしている(甲四四~五四、五六~五九、六二、六三、六五~六
七、六九~七八、八〇、八二~一九八、二〇九、二一〇)。
(三) 債権者の店舗は郊外型のドライブスルー店(自動車に乗ったまま商品を購
入することができる店舗)が約半数を占めているが、これらの店舗では、走行中の
自動車から店舗の存在を認識できるよう、必ず赤地の表示板と黄色の債権者ロゴマ
ークを頂部に載置したポール看板が道路脇に立てられており、入口にも、自動車の
侵入路を示すため、赤地に黄色の債権者ロゴマークと「←IN」の白文字を記載し
た可動式看板が置かれている(甲四の1、2、四七、四八、五一、五二、五七、七
五、七七、八〇、八五、九〇、九一、九三~九五、九七~九九、一〇六~一〇九、
一二四~一三九、一四四、一四七、一四八、一六二、一七三、一七六、二一六)。
(四) 債権者ロゴマークは、債権者店舗内の商品注文カウンターや座席の仕切部
分に表示されているほか、入口のドアの把手に浮き彫りされたり、椅子の背もたれ
に打ち抜かれたりして使用され、債権者の女子従業員のブラウスやセーターの胸
元、男子従業員のシャツ、ネクタイ及びタイピンにも一貫して表示されている(甲
四五、五五、六〇、六一、六四、六八、七九、八一、一九九~二〇八、二一二、二
一三、二一五、審尋の全趣旨)。
(五) 債権者は、テレビ・雑誌等のマスメディアにおいて宣伝広告活動を行って
いるが、その際、ハンバーガー等の商品の映像に加えて、常に債権者ロゴマーク又
は債権者商品ロゴマークを表示しており、現在行っている期間限定キャンペーンで
は「<26529-002>」という表示を用いている(甲一二、二一一、二一
四、審尋の全趣旨)。
以上の事実によれば、債権者ロゴマークは、遅くとも昭和五七年ころには、我が国
において債権者の営業を示す表示として広く認識され、周知表示を超えて著名表示
の域に到達していたものと認められる。
2(一) 債務者は、債権者ロゴマークがアルファベットのM一文字という極めて
簡単でありふれた標章に過ぎないから識別力を有せず、また、このような字体を債
権者に独占的・排他的に使用させることは許されるべきではないと主張する。
しかし、たとえアルファベットの一文字をデザインした単純な標章であっても、
字体に特殊な技巧が加えられていたり、長期間継続して特定の者によって使用され
たり、短期間でも効果的に広告されたりした結果、それが自社の営業を示す表示と
して識別力を備え、いわゆるセカンダリー・ミーニングを得るに至った場合には、
不正競争防止法一条一項二号にいう営業表示として、同法による保護の対象となる
と解するのが相当であり、債権者ロゴマークは、①二個の細長いアーチ型を左側ア
ーチの右側部と右側アーチの左側部が重なるように組み合わせたM字形で、②何処
にも直線又は角の部分がなく、③アーチの幅がMの左、右、中央各下端から山型の
頂部に向けて順次滑らかに細くなり、頂部が細い円弧状になっており、④M字の中
央下端が左右下端部よりも僅かに上方にある、という顕著な特徴を有し、他にこれ
らの特徴を全て備えたMが存在することは本件全疎明によっても認めることができ
ないのであるから、たとえ、アルファベットのM一文字という簡単な標章であって
も、字体に特殊な技巧が加えられているというべきであり、このような標章が債権
者により長期間継続して使用、広告宣伝された結果(前記1)、現在では、債権者
の営業を表示するものとしての自他識別力を備えていると考えるのが相当である。
債務者は、債権者ロゴマークの特徴は、①二つの山型の頂点が左下端と谷部の頂
点を結ぶ線分及び、谷部の頂点と右下端を結ぶ線分の中線上にある、②山型の頂点
が丸みを帯びている、③Mを構成する四本の線がいずれも円弧状であるという三店
であり、「キオスク エクストラ書体」「キオスク エクストラボールド書体」の
Mが①、「アイシャム ボールド書体」のMが②③の特徴を有するから、債権者ロ
ゴマークには識別力がないと主張するが、債務者の右主張によっても、これらの書
体の中に債権者ロゴマークの特徴を全て備えたMはないうえ、これらの文字を全体
的に観察すれば、前二者は角張ったM、後者は幾分丸みを帯びているが肉筆で描か
れた文字を思わせる左右非対称のMであり(乙一八)、いずれも二個のアーチ型の組み合わせという債権者ロゴマークの主要な特徴とは全く異なる印象を与えるか
ら、これらの文字の存在によって、債権者ロゴマークに自他識別力がないというこ
とはできない。
さらに、債務者は、債権者ロゴマークが「書体アドバタイザー ゴシック デミ
ボールド」のWを逆向きにしたものに酷似しているから識別力はないと主張する
が、債権者ロゴマークはアルファベットのMであり、全く別の文字であるWとは最
初から識別力を有するものであるから、債権者ロゴマークを一見した者がWを逆向
きにしたものを連想することは、現実には殆どあり得ないと考えられる。
(二) 債務者は、債権者ロゴマークがほとんど常に「マクドナルド」又は「Mc
Donald’s」という他の標章と組み合わされており、単独で用いられること
は稀であるから、債権者ロゴマークには周知性がないと主張する。
しかし、債権者ロゴマークは、現在では単独で店舗の内外に表示されたり、広告
宣伝に使用されるなど、必ずしも単独で用いられることが稀であるとは言い難く
(前記1)、仮に他の標章と組み合わされることが多いとしても、字体に特殊な技
巧が加えられ、二二年間にわたり、全国の店舗に「マクドナルド」又は「McDo
nald’s」という著名表示と同等に表示され続け、同じく著名表示である債権
者商品ロゴマークの要部の一つとして商品の包装等に使用され続けた結果、現在、
需要者の間では、他の著名標章と組み合わされなくとも、「<26529-001
>」が「マクドナルドのM」であるという認識が発生するに至っているというべき
であり、債務者の右主張は採用することができない。
(三) 債務者は、債権者が債権者ロゴマークを殆どの場合黄色に着色し、サービ
スマークの特例出願に当たっても、黄色の債権者ロゴマークを提出するなど、その
周知性獲得の努力が全て黄色という色彩による識別力を加味した表示により行われ
てきたと主張する。
しかし、色彩は標章の付随的な構成要素であり、形態に主たる特徴がない場合に
初めて要部となると解されるところ、債権者ロゴマークには、M字の形態に顕著な
特徴があり、現実の使用に当たっても、赤色で座席の仕切部分に描かれていたり
(浅草橋店)、銀色又は金色で店内のカウンターや外壁に表示されていたり(六甲
アイランド店、金沢文庫店、福島ルミネ店、下北沢店)、無着色でドアの把手や椅
子の背もたれに表示されるなど(伊勢店)、少ないながらも黄色以外の色が用いら
れる場合があり、この場合にも、債権者ロゴマークとしての同一性が失われている
とは考えられない(甲五六、六八、七一、七六、八一)。
Posted by ミカリン at 16:12│Comments(0)